ゆきんこの徒然日記

日々の出来事や思ったことを日記にして書いています。エッセイも時々書きます。

夜食のあっこちゃん

 

「夜食のあっこちゃん」は「ランチのあっこちゃん」の続きというか、第二章です。
どうしたことか、あっこちゃんの児童書の出版社は倒産してしまう。
会社が倒産すると社員は悲劇ですね。
その日から路頭に迷うことに。


でもこんな時には派遣社員はいいですね。
三智子は次の会社に派遣されて生活には困らないから。だけど、今度の会社にはあっこ女史のような素敵な上司はいない。それどころか大勢の正社員と派遣社員の中に入り、本来のOLの複雑な人間関係に悩まされることになる。


ある夜、三智子は同棲している彼氏と寝ていた時、携帯が鳴り、起こされる。
電話の主はあっこさんで、三智子は飛び起きる。
こちらからは連絡がつかなかったあっこさんだったから、三智子は飛び上がらんばかりに喜ぶ。
用件は、今外で待っているから、直ぐに来て欲しいということだった。
外には大きなワゴン車が駐まっていて、懐かしいあっこさんの姿があった。夜半過ぎです。


あっこさんは離職後、何とポトフの移動販売を起業していたのだった。
あっこさんは仕事が繁盛していて手が足りないから手伝って欲しい、というものだった。
他ならぬあっこ女史の頼みだから、三智子は二つ返事で引き受ける。
期間は1週間だけだし、OLの仕事が終わった後のことだから、無理をおして三智子は頑張ってみることにした。


あっこ女史はこの職業でも持ち前の能力を発揮していた。
移動販売車はやみくもに道路を走り回っているわけではなく、需要のあるところに狙いを定めていたのだ。
その日、三智子を乗せた車は、ある大手の新聞社の正門前に止まった。
最終版の発行準備を終えた編集者達が疲労困憊かつ空腹の状態で出てくる。そんなサラリーマン達にとってあっこの作ったポトフは最高のご馳走だったのだ。


次の日に向かったのは大きな病院だった。
深夜の勤務を終えた看護師や医師たちにとって温かいポトフは何よりのご馳走だったのです。
あっこのこの販売方法は彼女がそれまでに培ってきたノウハウを駆使したものだったのです。
あっこ女史自ら行う移動販売車は実験だったのです。


あっこ女史はうまくいくと確信できたら、フランチャイズ店を作り全国展開させようというものだったのです。

失業中も無駄に時間を費やしていなかったのです。
フランスに渡り、本場で本物のポトフ作りを修行していたのです。
そして単に手助けだけのために三智子を誘ったのではなかった。


この体験を通して三智子はOLをしていて障害になっている正社員と派遣社員との争いを解決する力も得るのだった。
あっこさんのお得意さんは皆、裏方の仕事をしている人ばかり。
つまり深夜に働いている病院の職員、新聞社や報道の仕事をしている人、私たちの食を支えてくれている市場の人達です。その日本を支えてくれている裏方さんを支える究極のサービス業だったのです。


それらの人達は三智子が普段仕事では絶対に接することはありませんね。
そんな人達に接す機会をあっこちゃんは三智子に与えたかったのですね。
そのお陰で三智子は潜在能力を発揮でき、正社員と派遣社員の仲を取り持つ力を得て、会社の上層部にも一目も二目もおかれる存在に成長するのでした。


そんな三智子を見届けたあっこさんは三智子の前から姿を消します。


でも読んでいる私はいつの日か、あっこちゃんの仕事を手伝っている三智子を予感しました。


この本が今ベストセラーになっているのは、悩める新入社員や希望をなくしているOL達がこの著書から勇気と元気を貰っているからだと思います。これも私の推定です。