ラッフルズホテルにて
彼(今の主人)と出会ったのはシンガポールでした。
当時、私はITの仕事をしていて、チャンギ国際空港の仕事でシンガポールに長期で出張していました。
彼は商社マンでシンガポールの駐在員。
最初にデートしたのが、かの有名なラッフルズホテル。
格式の高いホテルです。
私は出張中の身だったから、正装なんか出来ません。
何とか恰好のつくブラウスを買って、泊まっているホテルのコンセルジュに見て貰って、合格点を貰い、ラッフルズへ。
ラッフルズホテルはイギリスの著名な作家で「月と六ペンス」を書いたサマセットモームが逗留していたことでも有名です。
こんな高級なホテルでのディナーは始めて。
しかも初デート、私は衣装も靴も自信がなく他のお客の目は私に集中しているような気がしてどぎまぎしていました。
彼は何とか、私の気持ちをほぐそうと気を遣ってくれていたのが嬉しかった。
緊張のあまりか催してきて、席を立ち、廊下に出ました。
キョロキョロしたけど、お手洗いが分からない。
何人かいたけど、一番近くにいた使用人らしいおじさんに訊いたの。
多少英会話は出来るけど、ここは元イギリスの植民地です。クイーンイングッリッシュを使わねば、と。
「What should I do if I go to the restroom?(お手洗いはどう行けばいいですか?)」と。
するとおじさんは、目をクリクリさせて、私の顔をまじまじと見て、
「ン? オシッコシタイノネ」
大声だよ。周りに聞こえたか聞こえなかった分からないけど、真っ赤になっちゃった。
「マッスグイッテ、ツキアタリをヒダリネ」だって。
日本語じゃん。
英語は出来る方がいいけど、片言のブロークンでもいいのね。
それから私はかなり大胆になったと思います。